名古屋高等裁判所 昭和29年(う)674号・昭29年(う)675号・昭29年(う)678号・昭29年(う)677号・昭29年(う)676号 判決
しかし、原判決挙示の関係各証拠によると、被告人岡本光雄は中央毛織株式会社津工場庶務主任久世征夫から、同人が被告人岡本の職務に関し原判示第一の(一)ないし(三)のとおり、同各判示の趣旨の下に饗応接待又は供与するものであることの情を知りながら、その職務に関し右各判示の賄賂をそれぞれ収受したものであつて、儀礼として右饗応接待を受け又は毛糸の供与を受けたものでないことを優に認定できる。なお、所論は右各行為は職務に関しないものである旨主張するので改めて按ずるに、被告人岡本が本件当時不動産登記法第十一条の二の地方法務局長の指定したいわゆる登記官吏でなかつたことは論旨指摘のとおりであるが、しかし、同被告人は本件当時津地方法務局登記課長として同課勤務の登記官吏を指導監督すべき職務権限を有していたところ、その立場上これと密接な関係ある前記原判示第一の(一)ないし(三)のような登記物件の価格認定、家屋台帳訂正申告その他の登記手続に関する事務をも職務として担当していたことが認められないことはないから、従つて、被告人岡本の右原判示第一の(一)ないし(三)の行為はその職務に関するものといわなければならない。されば、原判決が右各判示事実を認定したのは正当であつて、事実誤認はない、論旨は理由がない。
弁護人乙、同丙の控訴趣意第三点(理由不備又は法令適用の誤)のAについて
しかし、原判決挙示の関係各証拠によると、被告人安藤幸一は原判示第一の(一)、(二)のとおり、右各判示の趣旨を了知しながら、同各判示の饗応接待(二回)を受け或は毛糸一ポンドの供与を受け、以てその職務に関しそれぞれ賄賂を収受したものであつて、儀礼として右各饗応接待を受け或は毛糸の供与を受けたものでないこと前段弁護人丙同丁共同名義の控訴趣意書第三点の(2)、(1)及び同第一点の4に対する説明のとおりである。なお、所論は右行為はいずれも同被告人の職務に関するものでない旨主張するので改めて按ずるに、なるほど原判決挙示の関係証拠によれば、被告人安藤は原判示第一の(一)、(二)の犯行当時津地方法務局商業法人登記係長として勤務していたものであり、すなわち登記官吏として主に法人登記に関する事務を担当していたことが認められるが、他方、原判決引用の関係証拠によると、同被告人は右当時登記官吏として補助的等のために、原判示第一の(一)、(二)のような法人関係の不動産登記に関する事務をも職務として担当していたことが認められないことはないから、従つて、被告人安藤の前記原判示第一の(一)、(二)の行為は同人の職務に関するものといわなければならない。されば、原判決が右各判示事実を認定し、刑法第百九十七条第一項前段第六十条を適用処断したのは正当であつて、原判決には理由不備又は法令適用の誤はなく、論旨は理由がない。
(裁判長判事 影山正雄 判事 石田恵一 判事 水島亀松)